スキルス胃がんになりやすい人の特徴と早期発見が難しい理由

更新日
投稿日
スキルス胃がんになりやすい人の傾向と、早期発見が難しい理由を示すイラスト(白衣の医師が説明する場面)
目次

スキルス胃がんとは、胃の粘膜表面に隆起や潰瘍をつくらず、胃の壁の中を広がるように進行する特殊なタイプの胃がんです。通常の胃がんと違って早期の変化をとらえにくく、進行してから見つかることも少なくありません。

「なりやすい人」として指摘されているのは、胃がんの家族歴がある人、ピロリ菌に感染している(していた)人、喫煙や塩分の多い食事といった胃がん全般のリスクに当てはまる人などです。中高年男性に多い胃がん全体の傾向と異なり、比較的若い世代や女性にもみられることがあります。ただし、当てはまるからといって必ず発症するわけではなく、当てはまらなくても発症する可能性はあります。

この記事でわかること
  • なりやすいとされる人の傾向(年代・性別・家族歴)
  • 生活習慣・リスク要因との関係
  • スキルス胃がんの基本的な特徴と通常の胃がんとの違い
  • 早期発見が難しい理由と検査・受診の考え方

なりやすいとされる人の傾向(年代・性別・家族歴)

年代や性別については、若い世代や女性の報告もありますが、発症確率を示す確立した統計があるわけではなく、年代・性別だけで一律に判断することはできません。

家族や血縁者に胃がんの既往がある場合や、若年で胃がんを発症した家族がいる場合は、遺伝的素因の関与が指摘されることがあります。近親者に50歳未満でびまん性胃がんと診断された人が2人以上いる場合や、近親者に3人以上のびまん性胃がん患者がいる場合は、CDH1遺伝子の変化が関わる遺伝性びまん性胃がんの可能性があるとして、専門医による遺伝カウンセリングの対象となることがあります。

年代・性別だけで判断せず、家族歴も含めて総合的に考えることが重要です。気になる場合は、消化器内科や遺伝相談の窓口に相談するとよいでしょう。

ここで挙げた傾向は、あくまで報告や研究で指摘されているものであり、すべての発症者に当てはまるわけではありません。

参考:遺伝性びまん性胃がん(国立健康危機管理研究機構 MGeNe)

若松先生からのひとこと

ご自身が当てはまるかどうか気になるときは、受診の際に「血縁者に胃がんの方がいるか(何歳ごろに診断されたか)」「ピロリ菌の検査や除菌を受けたことがあるか」「前回の胃カメラはいつごろか」の3点をお話しいただくと、検査を考える手がかりになります。年齢や性別だけで「なりやすい」「なりにくい」と決めつけず、気になることは気軽にお聞かせください。

生活習慣・リスク要因との関係

胃がん全般のリスク要因として、ヘリコバクター・ピロリ菌感染と喫煙、食塩・塩蔵食品の摂取が指摘されています。野菜や果物の摂取は、胃がんの予防に効果的な可能性があると考えられます。

スキルス胃がんに限定した生活習慣リスクが個別に確立されているわけではありませんが、これらの一般的な胃がんリスクは、スキルス型を含む胃がん全般で意識したい要因です。

ピロリ菌に感染していると、胃に炎症や潰瘍が起きて胃がんになる可能性が高くなるという報告があります。これまでにピロリ菌の検査を受けたことがない場合は、一度消化器内科で相談してみるとよいでしょう。感染が分かった場合には、医師の判断のもとで除菌治療が検討されます。除菌により将来的な胃がんリスクの低減が期待されるものの、除菌後もリスクがゼロになるわけではなく、定期的な内視鏡検査が推奨されています。

リスク要因に該当しても必ず発症するわけではなく、該当しなくても発症する可能性はあります。

参考:胃がん 予防・検診|がん情報サービス(国立がん研究センター)

スキルス胃がんの特徴と通常の胃がんとの違い

スキルス胃がんは、びまん浸潤型胃がん(胃壁の中を広がるように進行するタイプ)の代表的な病型で、胃癌取扱規約の肉眼型分類でボルマン4型に分類されます。組織型では未分化型が多いとされますが、未分化型の胃がんがすべてスキルス胃がんというわけではありません。

胃の粘膜表面に隆起や潰瘍をつくらず、胃壁の中を「しみ込むように」広がっていくため、内視鏡で見ても表面の変化に乏しく、生検でもがん細胞を確実に捉えられない場合があり、診断が難しいとされる胃がんの一つです。

胃の動きが悪くなり食事が通りにくくなる、胃が十分に広がりにくく食後すぐに満腹感を覚える、といった症状が出るころには、ある程度進行していることも少なくないようです。

参考:胃がんについて(国立がん研究センター がん情報サービス)、遺伝性胃癌の病態と内視鏡検査の役割(日本消化器内視鏡学会雑誌)

早期発見が難しい理由と検査・受診の考え方

スキルス胃がんが「早期発見が難しい」と言われる理由は、主に三つが挙げられます。第一に、初期には自覚症状がほとんどないか、あっても「胃もたれ」「食欲不振」「胃の違和感」など、ありふれた症状にとどまりやすいことです。

第二に、内視鏡検査で観察しても胃粘膜表面の変化が乏しく、見た目では分かりにくい場合があることです。第三に、生検でがん細胞を確実に捉えるのが難しく、複数回の検査や追加の画像検査が必要になることがある点です。

「以前から胃の調子が悪い」「食事の量が急に減った」「体重が短期間で減少した」「みぞおちの違和感や痛みが続く」「下痢や便通の変化が続く」「貧血や黒色便を指摘された」などの症状が続く場合は、自己判断で市販薬のみで様子を見ず、胃の不調が2週間以上続くときは消化器内科への相談が望まれます。

検査としては、上部消化管内視鏡(胃カメラ)、生検、必要に応じて造影検査や腹部CT、超音波検査などが組み合わされます。家族歴がある人や、若年で胃の不調が続く人、ピロリ菌陽性や慢性萎縮性胃炎を指摘されたことがある人は、定期的な内視鏡検査について主治医と相談しておきましょう。

若松先生からのひとこと

胃カメラで「異常なし」と言われたあとも、胃もたれや食欲不振、体重の減少などが続くことがあります。そのようなときは「前回問題なかったから」と我慢せず、いつから、どのくらいの頻度で、体重がどう変わったかをメモしてご相談ください。症状の変化をお伝えいただくと、追加の検査が必要かどうかを一緒に考えやすくなります。

きっかけとなる症状や検査の流れを詳しく知りたい方は、スキルス胃がんの発覚のきっかけ|早期発見の難しさと検査のポイントもあわせてご覧ください。

参考:遺伝性胃癌の病態と内視鏡検査の役割(日本消化器内視鏡学会雑誌)

よくある質問

Q.スキルス胃がんになる確率はどのくらいですか?

スキルス胃がんになる確率を示す確立した統計は公表されておらず、年代や性別だけで発症の可能性を数値化することはできません。家族歴やピロリ菌感染など複数の要因が関わるとされているため、気になる場合は自己判断せず消化器内科に相談してください。

Q.特定の食べ物を食べると、スキルス胃がんになりやすくなりますか?

スキルス胃がんだけになりやすくなる特定の食べ物が確立されているわけではありません。胃がん全般のリスクとして、食塩・塩蔵食品の摂り過ぎが指摘されており、野菜や果物の摂取は予防に効果的な可能性があると考えられます。食生活の見直しだけで発症を防げるわけではないため、検査や受診の目安とあわせて考えましょう。

Q.スキルス胃がんの症状に下痢はありますか?

スキルス胃がんの初期には自覚症状がほとんどないことが多く、下痢だけで判断できる特徴的な症状ではありません。ただし、胃の不調とあわせて便通の変化が続く場合は、ほかの消化器疾患の可能性もふまえて医療機関で確認したほうがよいでしょう。

Q.家族に胃がんの人がいる場合、検査はいつから始めるべきですか?

家族歴がある場合の検査開始時期は、血縁関係や発症年齢などの状況によって異なるため、一律の年齢は示されていません。近親者に若くして胃がんと診断された人が複数いる場合は、消化器内科や遺伝カウンセリングの窓口で相談し、個別に検査計画を確認しておきましょう。

まとめ

スキルス胃がんは、胃の壁の中を広がるように進行し、内視鏡でも見つけにくいとされる特殊な胃がんです。家族歴や遺伝、ピロリ菌感染・喫煙・塩分の摂取などとの関連が指摘されています。

ただし、これらに該当する人が必ず発症するわけではなく、該当しない場合に発症することもあります。早期発見が難しいため、気になる症状や家族歴がある場合は、自己判断せず消化器内科で相談し、必要な検査を受けましょう。

医療広告について
  • 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
  • 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。

若松 隆宏(わかまつ たかひろ) 先生
若松 隆宏(わかまつ たかひろ)先生

関西医科大学卒業。同大学大学院修了後、関西医科大学附属病院、同総合医療センターで消化器内科の診療に携わり、講師・病棟医長を務める。

2022年より医療法人若松医院の院長。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医、がん治療認定医。

医療法人若松医院

医療法人若松医院

この記事をシェアする
RELATED POSTS関連記事
記事一覧
Keywordsキーワードからコラムを探す
キーワード検索
人気キーワード
エリアから探す