経結膜脱脂と裏ハムラは、どちらも下まぶたの裏側(結膜)から切開し、眼窩脂肪(眼球のまわりにある脂肪)を扱う手術です。違いは、脂肪を取り除くか、その下のくぼみへ移すかにあります。
経結膜脱脂は、目の下のふくらみ(目袋)の原因になっている脂肪を減らす方法です。裏ハムラは、ふくらみの脂肪を切除せず、すぐ下のくぼみへ引き出して固定し、段差をなだらかにする方法です。どちらの手術にも、余った皮膚を切り取る工程はありません。
どちらが合うかは、ふくらみだけが目立つのか、くぼみや皮膚のたるみもあるのかで変わります。いずれも自由診療(保険外診療)で、費用やダウンタイムの説明は医療機関ごとに異なります。診察で原因の説明を受け、見積書を確認してから決めます。
- 経結膜脱脂と裏ハムラの違い(脂肪を取るか、移すか)
- 目の下のふくらみ・くぼみ・たるみができる仕組み
- ふくらみ・くぼみ・皮膚のたるみ別の向き不向き
- 2つの手術のリスク・副作用とダウンタイム
- 自由診療の費用の見方と、受診前に確認すること
目の下のふくらみ・くぼみ・たるみができる仕組み
下まぶたは、皮膚の下に眼輪筋(目のまわりの筋肉)、眼窩隔膜(脂肪を包む膜)、眼窩脂肪が重なる構造です。加齢とともに、これらの組織と靱帯がゆるんでいきます。
神戸大学医学部附属病院の美容外科によれば、眼窩隔膜がゆるむと中の眼窩脂肪が前にあふれ、目袋やクマの原因になります。下まぶたの皮膚は頬の骨と丈夫な靱帯でつながっており、ゆるんだ皮膚や眼窩隔膜がこの靱帯に引っかかるため、たるみが大きく見えます。
靱帯も加齢で下がるため、目袋は下へ広がり、頬との境目にある靱帯の部分の溝は深くなります。この溝が、くぼみとして目立ちます。
若い人でも、下まぶたの形によって影ができ、クマに見えることがあります。ふくらみ、くぼみ、皮膚のたるみは重なって現れることもあり、人によって割合が違います。
クマには、影のほかに色の要因もあります。日本化粧品技術者会誌に掲載された研究(2004年)では、クマのある女性の目の下で、血流の停滞を示す変化と、メラニン(色素)量の増加がそれぞれ見られました。メラニン量の増加は、年齢の高い層でより目立っていました。
経結膜脱脂と裏ハムラは、脂肪の量と位置を整える手術です。色の要因が強いクマについては、手術が適するかどうかも含めて、診察で医師に相談します。
参考:日本化粧品技術者会誌「目の周りのくまに対する皮膚科学的検討とその対処法について」
経結膜脱脂と裏ハムラの違いを比較|脂肪を取るか、移すか
経結膜脱脂は眼窩脂肪の一部を取り除く手術、裏ハムラ(経結膜的眼窩脂肪移動術)は眼窩脂肪を取り除かずにくぼみへ移して固定する手術です。切開する場所は同じ結膜側で、皮膚の表面を切開しない点も共通です。
裏ハムラの「裏」は、まぶたの裏側から行うことを指します。皮膚側を切開して同じ考え方で行う方法は、表ハムラと呼ばれます。
| 比べる項目 | 経結膜脱脂 | 裏ハムラ(経結膜的眼窩脂肪移動術) |
|---|---|---|
| 脂肪の扱い | 不要と判断した分を取り除く | 切除せず、くぼみへ移して固定する |
| 切開する場所 | まぶたの裏側(結膜) | まぶたの裏側(結膜) |
| 皮膚の切開 | 皮膚の表面は切開しない | 皮膚の表面は切開しない |
| 主に対象とする状態 | 目袋のふくらみ、クマ | ふくらみに加えて、その下の溝が深い状態 |
| 皮膚のたるみ | 皮膚を切除する工程はない。 脂肪が減ると、しわが目立つことがある | 皮膚を切除する工程はない。 合併症として下まぶたのたるみが挙げられている |
表は、神戸大学医学部附属病院美容外科の説明をもとに整理しました。手術の手順や適応の考え方は、医療機関や医師によって異なります。
脂肪を取る手術では、ゆるんだ皮膚はそのままで、中身の脂肪だけが減ります。同病院はこれを「萎んだ風船」にたとえ、状態によってはかえってしわが目立つこともあると説明しています。脂肪を移す手術は、ふくらみの脂肪を捨てずに、くぼみを埋める材料として使う考え方です。
参考:神戸大学医学部附属病院 美容外科「経結膜的眼窩脂肪移動術(裏ハムラ)」
どちらが向くか|ふくらみ・くぼみ・皮膚のたるみ別の目安
ふくらみが中心なら経結膜脱脂、ふくらみに加えてその下の溝も深いなら裏ハムラが候補です。皮膚のたるみが強いときは、皮膚側から切る手術も候補に入ります。次の表は、神戸大学医学部附属病院が示す適応を整理した目安です。実際の診断は医師が行います。
| 目立つ状態 | 検討されることが多い方法 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| ふくらみが中心で、皮膚のたるみは強くない | 経結膜脱脂 | 取りすぎ・取り残しと、しわの出方 |
| ふくらみが大きく、その下の溝も深い | 裏ハムラ | 下まぶたの外反(外側へめくれること)、涙袋の変化 |
| ふくらみ・溝に加えて、皮膚のたるみも強い | 表ハムラ(皮膚側を切開し、余った皮膚も同時に切除できる) | 皮膚の傷跡と、抜糸までの経過 |
| 皮膚のたるみが中心 | 下眼瞼除皺術(皮膚の切除) | 傷跡と、術後の下まぶたの形の変化 |
| 脂肪のふくらみが小さい | 脂肪を動かす手術が必要ない場合もある | 手術以外の方法を含めた説明 |
同病院によると、治療は「やればやるほど良いわけではない」ため、眼窩脂肪のふくらみがさほど大きくないなら裏ハムラを行う必要はありません。老化の進み方には個人差があるため、ふくらみ、くぼみ、皮膚のどれが主な原因かを診察で整理してから、手術の種類を決めます。
皮膚のたるみが目立つ人は、診察で皮膚の状態を診てもらい、勧められた手術を選ぶ理由の説明を受けます。
リスク・副作用|共通するものと、手術ごとに異なるもの
どちらの手術でも、術後の腫れのほか、血腫(血のかたまり)、感染、内出血、左右差などが起こり得ます。そのうえで、神戸大学医学部附属病院美容外科が挙げる項目は、脂肪を取る手術と移す手術で一部異なります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| どちらにも挙げられている項目 | 感染、血腫、腫れ、むくみ、内出血、傷跡、左右差、目のチクチク感、白目や角膜の損傷、眼球の火傷 |
| 経結膜脱脂で挙げられている項目 | 脂肪の取りすぎ・取り残し、小じわ・たるみの増加 |
| 裏ハムラで挙げられている項目 | 下まぶたの外反、下まぶたのたるみ、涙袋の消失 |
どの項目も、同病院は「術後は稀に」みられる場合があるものとして挙げており、項目ごとの頻度は示されていません。同病院の表ハムラの項目には複視(ものが二重に見えること)が挙がりますが、裏ハムラの説明には記載がありません。記載がなくても、起こらないとは限りません。
記載の範囲は医療機関ごとに違うため、手術を受ける医療機関の説明書で項目を確認します。
下まぶたの外反とは、下まぶたが外側へめくれ、いわゆる「あっかんべえ」のような状態になることです。涙袋の消失は、涙袋のふくらみが目立たなくなることを指します。気になる症状が出たときは、すぐに手術を受けた医療機関へ連絡するよう、同病院は案内しています。
ダウンタイム|腫れ・内出血と日常生活への影響
神戸大学医学部附属病院の説明では、どちらの手術も腫れのピークは術後2〜3日で、抜糸はありません。大きな腫れが落ち着くまでの目安は、脱脂が1〜2週間、裏ハムラが約1週間です。
| 項目 | 経結膜脱脂 | 裏ハムラ |
|---|---|---|
| 腫れのピーク | 術後2〜3日(個人差あり) | 術後2〜3日(個人差あり) |
| 大きな腫れが落ち着く目安 | 1〜2週間 | 約1週間 |
| 化粧をせずに外出できる目安 | 約1か月 | 約1か月 |
| 傷跡が目立たなくなる目安 | 約3か月 | 約3〜4か月 |
| 洗顔・メイク | 当日〜翌日から可能(説明により異なる) | 翌日から可能 |
| 入浴(湯船) | 1週間は避ける | 1週間は避ける |
| 運動 | 約1週間控える | 約2週間控える |
表の数値は同病院の患者向け説明で、医療機関や術式の細部によって異なります。この数値から、どちらの回復が早いかは判断できません。経結膜脱脂では、内出血や感染があると、腫れが長引くことがあります。どちらの手術も、学校や仕事は翌日から行けるものの、大きな腫れが見られるため、同病院は2〜3日の休みを勧めています。
皮膚側を切開する表ハムラでは、洗顔やメイクは傷を避けて当日から、入浴や傷の部分のメイクは抜糸(術後約1週間)の翌日からです。同病院によると、腫れや内出血は1〜2週間で引き、約3〜4か月で自然な状態になります。
費用と保険の見方
経結膜脱脂と裏ハムラは、ふくらみやクマを整える目的の場合、自由診療(保険外診療・全額自己負担)です。料金は医療機関が決めます。料金は医療機関が決めるため、同じ名称の手術でも金額は異なります。
神戸大学医学部附属病院の美容外科は、下まぶたの内反症、逆さまつげ、外反症のように機能の問題がある場合は、保険診療の対象になることが多いと説明しています。
こうした機能の問題が疑われるときは、同病院は形成外科の受診を勧めています。上まぶたが重い・目が開けにくいといった症状の原因と受診の目安は、次の記事で紹介します。

同じ「脱脂」「裏ハムラ」という名称でも、料金に含まれる内容は医療機関によって違います。見積書では、次の項目を確認します。
- 料金の単位(両目か片目か)
- 料金に含まれるもの(麻酔、検査、薬、術後の診察)
- 術後に再診が必要な回数と、その費用
- 修正や再手術が必要になったときの扱いと費用
- キャンセルや契約を解除するときの条件
- 支払う総額(税込)
国民生活センターには、モニター契約などで広告の金額や予算より高額な契約になった美容医療の相談が寄せられています。見積書を受け取って日を改めて決めると、金額の食い違いに気づきやすくなります。
参考:国民生活センター「増加する美容医療サービスのトラブル」(令和5年8月30日)
受診前に確認したいこと|説明・ほかの方法・契約
厚生労働省は、美容医療を受ける前に、使用する薬などを自分でも説明できるか、リスクと副作用の理解、ほかの方法の説明、今すぐ必要かの4点を確認するよう呼びかけています。経結膜脱脂と裏ハムラを検討するときは、診察で次の点を確認します。
- 自分の目の下は、ふくらみ・くぼみ・皮膚のたるみのどれが主な原因かを、医師が説明したか
- その手術を勧める理由と、ほかの方法を勧めない理由を聞いたか
- リスク・副作用と、起きたときの対応を、書面で受け取ったか
- ヒアルロン酸などを併用する場合は、使う製剤の説明を受けたか
参考:厚生労働省「確認してください!美容医療の施術を受ける前にもう一度!」
不安をあおられたり、モニター契約などを勧められたりしても、その場で契約や施術を決めないよう、国民生活センターは呼びかけています。契約内容や解約条件で困ったときは、消費者ホットライン(188)が窓口です。

よくある質問
まとめ
経結膜脱脂は脂肪を取り除いてふくらみを減らす方法、裏ハムラは脂肪を移してふくらみと溝の段差を整える方法で、皮膚のたるみが強いときは、皮膚側から切る手術も候補になります。診察で原因とほかの方法の説明を受け、リスクの書面と見積書を受け取ってから、日を改めて決めます。
- 神戸大学医学部附属病院 美容外科「下まぶたの治療」
- 神戸大学医学部附属病院 美容外科「脱脂術」
- 神戸大学医学部附属病院 美容外科「経結膜的眼窩脂肪移動術(裏ハムラ)」
- 日本化粧品技術者会誌「目の周りのくまに対する皮膚科学的検討とその対処法について」
- 国民生活センター「増加する美容医療サービスのトラブル」
- 厚生労働省「確認してください!美容医療の施術を受ける前にもう一度!」
自由診療に関する詳細内容
経結膜脱脂と裏ハムラを受ける前に、次の4点を医療機関で確かめておきましょう。
- 治療内容:経結膜脱脂は、下まぶたの裏側(結膜)を切開し、ふくらみの原因になっている眼窩脂肪の一部を取り除く手術。裏ハムラは、同じく結膜側から、眼窩脂肪を取り除かずにすぐ下のくぼみへ移して固定する手術
- 費用(税込)の目安:経結膜脱脂・裏ハムラとも自由診療で、料金は医療機関ごとに異なる。全国の相場を示す公的な目安はないため、両目か片目か、麻酔・薬・術後の診察を含むかを確かめ、税込の総額を見積書で確認する
- 治療期間・回数の目安:手術は通常1回。抜糸はなく、大きな腫れが落ち着くまで経結膜脱脂は1〜2週間、裏ハムラは約1週間、傷跡が目立たなくなるまで経結膜脱脂は約3か月、裏ハムラは約3〜4か月(いずれも神戸大学医学部附属病院の説明)。術後診察の回数は医療機関によって異なるため、事前に確認する。経過には個人差がある
- 主なリスク・副作用:感染、血腫、腫れ、内出血、左右差、白目や角膜の損傷など。経結膜脱脂では脂肪の取りすぎ・取り残しや小じわ・たるみの増加、裏ハムラでは下まぶたの外反や涙袋の消失が挙げられている
- ほかの方法:表ハムラ、下眼瞼除皺術(皮膚の切除)、ヒアルロン酸注入・脂肪注入も、見た目を整える目的なら自由診療。費用とリスク・副作用は受診する医療機関で確認する
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


