便に血が混じる原因は、いぼ痔や切れ痔のこともあれば、大腸ポリープや大腸がん、腸の炎症、胃や十二指腸の潰瘍のこともあり、血の色や量を見ただけでは、痔か大腸の病気かは見分けられません。そのため、一度だけ・少量・痛みを伴わない出血でも自己判断で様子を見ず、消化器内科で原因を調べてもらうことが大切です。
国立がん研究センターのがん情報サービスによると、早期の大腸がんには自覚症状がほとんどありません。日本大腸肛門病学会も、肛門の病気による出血は直腸がんの出血とよく似ていると説明しています。血の色や出方から考えられる病気、受診を急ぐサイン、何科で相談するかを知っておけば、受診するかどうか、どこへ行くかを迷わずに決められます。
この記事でわかること
- 一度だけ・少量・痛みを伴わない出血を様子見しない理由
- 血の色や出方から考えられる出血の場所と主な病気
- すぐに受診したいサインと、早めに相談したいサイン
- 相談する診療科と、原因を調べる検査
一度だけ・少量・痛みを伴わない血便でも受診を考えたい理由
「一度だけだった」「ほんの少しだった」「痛くなかった」という出血は、痔だろうと考えて受診を先延ばしにしがちです。しかし、どれも大腸の病気がないことの裏付けにはなりません。

早期の大腸がんは自覚症状がほとんどない
大腸がんは早い段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると便に血が混じる、便の表面に血液が付くといった症状が出てきます。出血が一度で止まったとしても、それだけで病気がないとは言えません。
がん情報サービスは、こうした症状は痔などの良性の病気でも起こるとしたうえで、自己判断せず早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。出血の回数が少なくても、一度原因を調べておけば、その後も不安なまま過ごさずに済みます。
痔の出血と大腸の病気の出血はよく似ている
日本大腸肛門病学会によると、肛門の病気や直腸ポリープなどによる出血は、大腸がん、とくに直腸がんの出血とよく似ています。同学会は、出血が続くときは大腸内視鏡検査などの精密検査が必要としています。
以前から痔があると分かっている人でも、今回の出血が痔によるものとは限りません。出血を見ただけで、痔か大腸の病気かを自分で見分けるのは困難です。
痛みの有無は安心材料にならない
肛門の内側にできる内痔核は、痛みを感じる神経がない場所にあるため、出血しても痛まないのがふつうです。大腸がんやポリープも、早い段階では痛まないことがよくあります。
痛まない出血だから痔ではない、あるいは心配ない、とはどちらとも判断できません。反対に、排便のたびに肛門が強く痛む、急に肛門が腫れて痛むといった場合は、切れ痔や、痔が腫れて戻らなくなった状態が疑われます。痛みの有無や出方も、医師に伝える大事な情報です。
血の色・出方から考えられる出血の場所
血の色や出方から、どのあたりで出血しているかをおおまかに推測できます。日本大腸肛門病学会が示している目安をもとにまとめると、次のとおりです。
| 血の色・出方 | 考えられる出血の場所 | 主な病気の例 |
|---|---|---|
| 鮮やかな赤い血が、排便時にほとばしるように出る | 肛門の近く | 内痔核(いぼ痔) |
| 排便時に痛みがあり、少量の血が紙に付く | 肛門 | 裂肛(切れ痔) |
| 血に粘液が混じる、下痢を伴う | 大腸 | 潰瘍性大腸炎など |
| 強い腹痛を伴う下痢のあとに血便が出る | 大腸 | 虚血性大腸炎 |
| 腹痛がなく、突然、赤黒い血がまとまって出る | 大腸 | 大腸憩室出血 |
| タールのように黒い便が出る | 胃・十二指腸など | 胃潰瘍・十二指腸潰瘍など |
ただし、この表で原因まで決めることはできません。痔の出血でも、血がいったん直腸にたまってから出ると赤黒く見えますし、肛門近くの出血と直腸がんの出血は見た目ではほとんど区別できないためです。
血が便の表面に付いているのか、便全体に混じっているのか、紙に付く程度なのか、便器の水が赤くなるほどなのかも、診察で役立つ情報です。トイレを流す前に色と出方を見ておくと、医師に伝えやすくなります。
便に血が混じるときに考えられる主な病気
便に血が混じる原因は、肛門の病気、大腸の病気、腸の炎症、胃や十二指腸の病気に大きく分けられます。
いぼ痔(痔核)・切れ痔(裂肛)
いぼ痔の出血は鮮やかな赤色で、排便のときに出て、排便が終わると自然に止まります。内痔核は肛門の内側にあるため痛みを感じにくく、強くいきむと肛門の外へ出てくることもあります。
切れ痔は、硬い便などで肛門の皮膚が切れた状態です。排便時に痛みがあり、紙に少量の血が付く程度の出血がよくみられます。
内痔核が肛門の外に出たまま戻らなくなった状態(嵌頓痔核)や、肛門のまわりに血のかたまりができる血栓性外痔核では、急に強い痛みと腫れが出ます。このような痛みがあれば、肛門科(肛門外科)や消化器内科を早めに受診してください。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープや大腸がんでは、病変の表面から出血して便に血が混じったり、便の表面に血が付いたりします。出血がごくわずかで、目で見ても分からないこともあります。
大腸がんが進むと、出血が続いて貧血になる人もいます。がん情報サービスは、腸が狭くなることで便秘や下痢、便が細くなる、便が残る感じがする、おなかが張るといった変化が出る場合もあると説明しています。
症状の出方には個人差があり、同じような変化は痔や腸の機能の乱れでも起こります。症状だけで大腸がんかどうかは判断できません。
大腸憩室出血
大腸憩室は、大腸の壁の一部が外側へ袋のように膨らんだもので、年齢が上がるほど多くなります。腹痛がないまま、突然、鮮やかな血や赤黒い血がまとまって出るのが典型的です。
解熱鎮痛薬や、血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を飲んでいる高齢の人では、とくにこの病気が疑われます。多くは自然に止まりますが、再び出血することもあるため、止まったあとも受診して経過を診てもらうと安心です。
虚血性大腸炎
虚血性大腸炎は、大腸の血の流れが一時的に悪くなり、腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。急に下腹部が痛み、そのあとに下痢や鮮やかな血の混じった便が出ます。
動脈硬化や便秘が関わるとされ、便秘のときに下剤を飲んだあと強い腹痛と下痢が起こり、続いて血便が出るといった経過が典型的です。高齢の人に多い病気ですが、若い人にも起こります。
潰瘍性大腸炎・クローン病
潰瘍性大腸炎とクローン病は、腸に慢性的な炎症が起こる病気で、まとめて炎症性腸疾患と呼ばれます。潰瘍性大腸炎では粘液の混じった血便(粘血便)や下痢が多く、クローン病では腹痛や下痢、血便、体重の減少などがみられます。
どちらも症状が悪い時期と落ち着いている時期を繰り返すため、下痢や血便がいったん治まっても治ったとは限りません。血の混じった下痢が続くときは、消化器内科で相談が必要です。
感染性腸炎
細菌などに感染して腸に炎症が起こると、腹痛や下痢、発熱とともに血便が出る場合があります。受診するときは、症状が出る前に何を食べたか、周りに同じ症状の人がいるかも伝えると、原因を絞り込む手がかりになります。
下痢や嘔吐が続くと、体の水分が失われやすくなります。水分がとれない、尿の量が明らかに減った、ぐったりしているといった様子があれば、早めの受診が必要です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の潰瘍から出血すると、血液が消化液の影響を受けて黒くなり、タールのような黒い便(黒色便)として出ることがあります。出血量が多いと、血を吐く(吐血)ほか、めまいや動悸といった貧血の症状が出ることもあります。
日本消化器病学会のガイドによると、消化性潰瘍の多くはピロリ菌の感染によるもので、次に多いのが解熱鎮痛薬などの薬によるものです。黒い便が出たときは、痛み止めをよく飲んでいるか、ピロリ菌の検査を受けたことがあるかも、医師に伝えておくと診察に役立ちます。
受診の目安|すぐに受診したいサインと、早めに相談したいサイン
どのくらい急いで受診すべきかは、血の量や色だけでなく、体全体の様子、腹痛の有無、出血の回数、飲んでいる薬などから判断します。症状ごとの行動の目安は、次のとおりです。
| 急ぐ度合い | 主な様子 | 行動の目安 |
|---|---|---|
| すぐに受診 | 便器の水が赤くなるほどの出血、短い時間に何度も出る、血を吐いた、強い腹痛、立っていられないほどのふらつき、冷や汗、意識がぼんやりする | 救急車を呼ぶか、救急医療機関に連絡する |
| 早めに相談 | 黒い便が続く、出血を繰り返す、めまい・動悸・息切れ、便が細くなった、便秘と下痢を繰り返す、体重が減った、血を固まりにくくする薬を飲んでいる | できるだけ早く消化器内科へ相談する |
| 受診を予約 | 一度だけ・少量・痛みを伴わない出血で、ほかに症状がない | 様子見を続けず、消化器内科などで相談する |
いちばん下の段は、救急に行くほどではなくても、原因を調べておきたい状態です。家族に大腸がんになった人がいる場合や、大腸がん検診(便潜血検査)で精密検査が必要と言われた場合も、早めに受診を予約しましょう。
便に血が混じるときは何科を受診する?
迷ったときは、まず消化器内科を受診するのがよいでしょう。消化器内科では、胃や大腸などの消化管を幅広く診て、必要に応じて大腸カメラや胃カメラなどの内視鏡検査を行います。
肛門の痛みや腫れ、出っ張りなど、肛門まわりの症状が中心であれば、肛門科(肛門外科)も選べます。近くに専門の医療機関がないときは一般の内科で相談し、専門の医療機関を紹介してもらうこともできます。
| 診療科 | 主に診る内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 消化器内科 | 胃・大腸など消化管の病気、内視鏡検査 | 原因が分からない血便、黒い便、便通の変化、腹痛、貧血 |
| 肛門科(肛門外科) | いぼ痔・切れ痔など肛門の病気 | 排便時の痛み、肛門の腫れや出っ張り |
| 内科 | 全身の状態の確認、専門科への紹介 | どこに行けばよいか迷うとき |
受けられる検査は医療機関によって異なります。大腸カメラを受けられるかどうかを、予約の前に公式サイトや電話で確かめておけば、受診先を選ぶときに迷いません。
血便の原因を調べる主な検査
医療機関では、出血の色や量、いつから続いているか、腹痛や便通の変化、飲んでいる薬などを問診で確認し、必要な検査を選びます。
肛門の診察と血液検査
肛門のまわりを目で見る視診や、医師が指で肛門の内側を触れて調べる直腸指診、筒状の器具で肛門の中を見る肛門鏡検査で、いぼ痔や切れ痔、肛門の近くの病変がないかを調べます。
出血が続いて貧血になっていないか、炎症が起きていないかを、血液検査で調べることもあります。肛門の診察で痔が見つかっても、奥の大腸に病気がないとは言い切れないため、出血の出方や年齢などから、大腸カメラまで行うかを医師が判断します。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
肛門から内視鏡を入れて、大腸の内側を直接観察する検査です。ポリープやがん、炎症の有無を調べ、必要に応じて病変の一部を取って顕微鏡で調べたり(生検)、その場でポリープを切除したりできます。

検査の前には下剤を飲んで、大腸の中を空にしておきます。施設によっては、緊張を和らげる薬や鎮静薬を使います。ごくまれに出血や穿孔(腸に穴があくこと)などの偶発症が起こることがあるため、検査の方法とあわせて事前に説明を受けておくことが大切です。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
黒い便が出ているときなど、胃や十二指腸からの出血が疑われる場合に行います。口や鼻から内視鏡を入れて、潰瘍などの出血のもとを調べ、必要に応じてその場で止血の処置をします。
胃カメラと大腸カメラのどちらが必要か、両方とも受けるかは、問診や診察の結果をもとに医師が判断します。ふだん飲んでいる薬や持病は、検査の進め方にも関わるため、先に伝えておきます。
便潜血検査(健診で陽性と言われた場合)
便に混じった目に見えない血液を調べる検査で、主に症状のない人の大腸がん検診で使われます。がん情報サービスによると、2日分の便を採取して大腸の病気による微量の出血がないかを調べ、1日分でも陽性なら精密検査が必要です。
陽性と出たあとで、もう一度便潜血検査を受けても、精密検査の代わりにはなりません。痔がある人でも、出血のもとが痔か大腸の病気かは精密検査をしないと分からないため、陽性の結果が届いたら大腸カメラなどの精密検査を受ける必要があります。

受診までにできること
受診までの間に出血の様子を記録しておくと、医師が原因を考えるときの助けになります。ただし、大量の出血や強いふらつきがあるときは、記録より受診を優先してください。
出血の様子を記録する
- 血の色:鮮やかな赤、赤黒い、黒いのどれに近いか
- 出方:表面に付くか全体に混じるか、どのくらいの量か
- 粘液:血に粘液が混じっていないか
- 回数と時期:いつから、何回くらい出たか
- 痛み:排便時の肛門の痛みや腹痛があるか
- そのほかの変化:下痢や便秘、便が細くなった、残る感じがする、体重が減ったといった変化があるか
- 体調:めまい、動悸、息切れ、だるさがあるか
飲んでいる薬と市販薬の扱い
血液を固まりにくくする薬や解熱鎮痛薬を飲んでいる人は、薬の名前を医師に伝えます。お薬手帳を持っていくと、名前や量を正確に伝えられます。出血が心配でも、処方された薬を自分の判断でやめず、続けるか休むかは医師と相談して決めます。
出血の原因が分からないうちは、市販の痔の薬だけで様子を見るのは避けましょう。原因が痔でなければ痔の薬では治らず、大腸の病気に気づくのが遅れるおそれがあります。
すでに痔と診断されて市販薬を使う場合も、用法・用量を守ります。出血が止まらない、繰り返す、便通の変化を伴うといったときは、薬を続けるより受診を優先してください。
よくある質問
まとめ
便に血が混じる原因には、いぼ痔や切れ痔のほか、大腸ポリープや大腸がん、大腸憩室出血、虚血性大腸炎、炎症性腸疾患、胃や十二指腸の潰瘍などがあります。血の色や出方から出血の場所はある程度推測できますが、痔と大腸の病気の出血はよく似ていて、見た目だけでは区別できません。
一度だけ、少量、痛みを伴わない出血でも、様子を見続けずに受診しましょう。大量の出血やふらつきがあればすぐに救急医療機関へ連絡し、そうでなければ出血の様子を記録して、消化器内科で相談の予約をとってください。
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


