大腸内視鏡検査を受けた方がいい人とは、便潜血検査で要精密検査となった人や、血便・長引く便通の変化などの症状がある人です。症状がなく40歳以上の人は、いきなり大腸内視鏡検査ではなく、まず1年に1回の大腸がん検診(便潜血検査)を受けることが基本です。
大腸がんは、早期には自覚症状がほとんどありません。そのため、症状がなくても自己判断せず、検診の結果や家族歴、過去のポリープの有無を踏まえて、受ける検査と時期を決めます。大腸内視鏡検査が必要かどうかは、症状、診察結果、既往歴、家族歴などを踏まえて医師が判断します。
- 大腸内視鏡検査を受けた方がいい人の目安
- 症状があるとき、いつ消化器内科へ相談するか
- 症状がない場合の大腸がん検診と大腸内視鏡検査の使い分け
- 家族歴や過去のポリープがある場合の考え方
- 検査を受けるか迷ったときの考え方
大腸内視鏡検査を受けた方がいい人の目安
まず、自分が次の3つのどれに当てはまるかを確認しましょう。
- 血便、便通の変化、腹痛などの症状がある場合や、便潜血検査で要精密検査となった場合は、消化器内科へ相談します。
- 大腸がんの家族歴、大腸ポリープの切除歴、炎症性腸疾患がある場合は、医師と検査の時期を相談します。
- 症状がなく、家族歴やポリープの既往もない40歳以上の場合は、まず1年に1回の大腸がん検診(便潜血検査)を受けます。
より細かい状況ごとの対応は、次の表にまとめています。
| 現在の状況 | 次の行動 | 内視鏡検査を受ける場面 |
|---|---|---|
| 血便が出た、便に血が付いている | 痔と自己判断せず、消化器内科へ相談する | 原因を調べるために受けることがある |
| 原因のはっきりしない下痢・便秘・腹痛が続く | 消化器内科へ相談する | 診察のうえ、必要に応じて受ける |
| 便潜血検査で要精密検査となった | 1回だけの陽性でも、消化器内科などで精密検査を受ける | 精密検査の方法の一つとして受ける |
| 大腸がんの家族歴がある | 続柄や診断時の年齢を医師へ伝え、検査の必要性と時期を相談する | 医師が必要性と時期を判断する |
| 過去に大腸ポリープを切除した | 前回の検査結果をもとに、次回の時期を医師へ確認する | 経過観察として受ける場合がある |
| 潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患がある | 主治医が示す検査計画に従う | 病状に応じて定期的に受ける場合がある |
| 症状がなく、40歳以上 | 1年に1回、大腸がん検診(便潜血検査)を受ける | 検診で要精密検査となったときに受ける |
| 症状がなく、40歳未満で家族歴もない | 気になる症状がある場合や、家族歴などが分かった場合は医師へ相談する | 大腸がん検診の対象は40歳以上のため、現時点では対象外 |
これらは病気の有無を判断するチェックリストではありません。該当する項目があっても大腸の病気があるとは限らず、大腸内視鏡検査以外の検査が選ばれる場合もあります。一方で、症状がなくても家族歴やポリープの既往があるときは、検診とは別に、検査の時期を医師に相談してください。
症状があるときは検診を待たず消化器内科へ
血便や便通の変化などがある場合は、年齢や便潜血検査の結果にかかわらず、消化器内科へ相談してください。日本消化器内視鏡学会は、便に血液が混じったり付着したりするとき、便潜血検査が陽性のとき、原因不明の下痢・便秘・腹痛があるときに大腸内視鏡検査が検討されると説明しています。診察、血液検査、便検査などを踏まえ、検査の必要性と優先度は医師が判断します。
すぐに受診を考えたい症状
- 大量の血便が出た
- タール状の黒い便が出た
- 強い腹痛が続いている
- 腹部が著しく張り、繰り返し嘔吐している
- めまい、冷や汗、意識が遠のく感覚がある
これらは、消化管からの出血や腸閉塞など、早急な対応が必要な状態で現れる場合があります。症状が強いときは通常の外来予約を待たず、救急医療機関への受診を検討してください。
- 便秘、下痢、排便回数の変化が続いている
- 便が細くなった、便が残る感じが続いている
- 腹痛や腹部の張りが長引いている
- 貧血の症状(めまいなど)が続いている
- 便潜血検査で要精密検査となった
血便は痔で起こる場合もありますが、症状だけで出血の原因を特定することはできません。便秘や下痢も食事や服用薬などで起こることがありますが、これまでと違う状態が続くときは医療機関へ相談してください。国立がん研究センターも、症状に気付いたら早めに消化器科・胃腸科・肛門科などの身近な医療機関を受診するよう案内しています。
加地先生からのコメント
血便や便通の変化は、「いつもと違う状態が続いている」ことが、受診を考える手がかりになります。
診察では、いつ頃からか、どのくらいの頻度か、血は便の表面に付いているのか混じっているのか、腹痛やめまいなどがないかをお聞きします。
気づいた時期や回数を、簡単なメモに残しておくと、お話しいただきやすくなります。
「痔だから」「年齢のせいだから」と一人で結論を出さず、気になる変化があれば、早めにご相談ください。
症状がない場合は大腸がん検診(便潜血検査)を受ける
症状がない人に対する大腸がん検診は、がんによる死亡を減らす目的で行われます。国立がん研究センターは、40歳から1年に1回の便潜血検査を勧めています。大腸がんは早期にはほとんど自覚症状がないため、症状がない時期に検診を受け、早く見つけて治療することが、大腸がんで亡くなることを防ぐことにつながります。
国立がん研究センターは、喫煙、飲酒、肥満、炎症性腸疾患があると大腸がんが発生する危険性が高まると説明しています。こうした要因がある人は、検診を欠かさず受け、症状が出たときは早めに相談しましょう。ただし、生活習慣だけで大腸内視鏡検査が必要になるわけではなく、必要性は医師が判断します。
便潜血検査は、便に含まれる微量の血液を調べる検査です。大腸の内部を直接観察する検査ではないため、結果だけで出血の場所や原因は分かりません。検診には、がんがあっても陰性になる(偽陰性)、異常がないのに陽性になる(偽陽性)といった不利益があります。検診を受けたあとも、症状が出たときは結果にかかわらず相談してください。なお、要精密検査となったときに行う大腸内視鏡検査では、まれに出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの偶発症が起こることがあります。
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸・直腸の粘膜をカメラ映像で観察する検査です。ポリープ、炎症、出血、腫瘍を疑う変化などを確認し、必要に応じて組織を採取する生検や、ポリープの切除を行う場合があります。
| 項目 | 大腸がん検診(便潜血検査) | 大腸内視鏡検査 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 症状のない40歳以上の方 | 検診で要精密検査となった方、症状や既往歴から必要と判断された方 |
| 方法 | 便に含まれる血液を調べる | 大腸・直腸の粘膜をカメラ映像で観察する |
| 分かること | 便に血液が混じっているか | ポリープ、炎症、出血、腫瘍を疑う粘膜変化など |
| 次の対応 | 要精密検査なら医療機関を受診する | 必要に応じて生検、ポリープ切除、追加検査を行う |
便潜血検査で要精密検査となった場合
消化器内科などを受診し、精密検査を受けてください。便潜血検査は通常2日分の便を調べますが、1回だけ陽性でも要精密検査の対象です。日本消化器内視鏡学会は、1回だけ陽性の場合も精密検査として大腸内視鏡検査を受けることを勧めています。
陽性のあとに検査をやり直して陰性になっても、精密検査を受けなくてよいという判断にはなりません。再検査は精密検査の代わりにならないためです。精密検査の方法には、全大腸内視鏡検査のほか、大腸内視鏡検査と大腸X線検査の併用、大腸CT検査があり、どの方法にするかは医師が判断します。
便潜血検査で陽性になる原因には、ポリープ、炎症、痔などがあります。ただし出血の原因を症状だけで判断することはできないため、「痔がある」「自覚症状がない」という理由で放置しないでください。受診するときは健診結果を持参すると、検査日、判定、過去の結果を医師へ伝えやすくなります。
家族歴・過去のポリープ・持病がある場合
大腸がんの家族歴、過去の大腸ポリープ、炎症性腸疾患などは、大腸内視鏡検査の必要性や時期を判断する材料になります。該当する人全員が同じ年齢や間隔で検査を受けるわけではありません。
大腸がんの家族歴がある場合
受診時には、分かる範囲で次の情報を医師へ伝えてください。
- 誰が大腸がんと診断されたか
- 診断されたときの年齢
- 同じ病気になった血縁者が複数いるか
- 本人が過去に大腸ポリープを指摘されたことがあるか
家族歴があるという理由だけで、検査の開始年齢や間隔を一律に決めることはできません。若い年齢で診断された血縁者がいる場合や、血縁者が複数いる場合は、その内容を詳しく伝えましょう。
過去に大腸ポリープを切除した場合
次回の検査時期は、切除したポリープの数、大きさ、病理検査の結果、前回の観察範囲などをもとに判断されます。「毎年」「何年間も不要」などと一律には決められないため、検査後に示された次回時期を確認し、内視鏡検査の報告書や病理検査の結果を保管してください。
炎症性腸疾患などの持病がある場合
潰瘍性大腸炎やクローン病などがある場合は、病気の範囲や治療の状況に応じて、定期的な内視鏡検査が計画されることがあります。一般的な大腸がん検診ではなく、主治医が示す検査計画に従ってください。
検査を受けるか迷ったときの考え方
大腸内視鏡検査は、症状や検診の結果があるときに、大腸の中を直接見て原因を調べられる検査です。一方で、下剤による前処置や検査中の負担があり、まれに出血や穿孔などの偶発症も起こります。受けるかどうかは、得られる情報と負担の両方を医師と確認して決めます。
- 症状がある、または検診で要精密検査となったときは、痔や年齢のせいと決めつけず、まず医師に相談してください。
- 症状がなく、検診でも異常がなければ、次の検診を受けることが基本です。すぐに内視鏡検査が必要とは限りません。
- 高齢の方や、持病・服用中の薬がある方は、前処置や検査の負担、鎮静薬の使い方が変わることがあります。主治医と相談して決めましょう。
- つらさや不安が大きいときは、鎮静薬を使えるかどうか、事前に医療機関へ確認してください。
通常の大腸内視鏡検査が難しい場合には、カプセル内視鏡が行われることがあります。ただし適応は限られ、どの検査が適しているかは症状や状態によって異なります。希望する場合も、自己判断せず医師へ相談してください。
鎮静薬を使った場合、当日は自動車・バイク・自転車を運転できません。帰宅方法も事前に確認しましょう。
加地先生からのコメント
大腸内視鏡検査は、下剤による前処置や検査中の負担が気になり、ためらう方もおられます。
そのようなときは、何がいちばん不安なのか(下剤、痛み、恥ずかしさ、時間など)を、受診の際にそのままお話しください。
鎮静薬の使い方や前処置の方法など、負担を和らげる工夫を一緒に考えることができます。
検査が必要かどうかは、症状や検診の結果、ご家族の病歴によって、お一人おひとりで異なります。
迷うことそのものを、ご相談のきっかけにしていただければと思います。
検査前に確認したいこと・受診先
検査前の準備、鎮静薬の使用、ポリープ切除への対応は、医療機関や本人の状態によって異なります。予約時や事前診察で、次の点を確認してください。
| 確認したい項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 前処置 | 食事制限の内容、下剤を飲む時間・場所 |
| 鎮静薬 | 使用できるか、付き添いの要否、検査後の休憩と帰宅方法 |
| ポリープ切除 | 当日に切除できるか、後日の治療になる場合があるか |
| 服用薬 | 抗凝固薬、抗血小板薬、糖尿病薬、インスリンの扱い |
| 持参するもの | お薬手帳、健診結果、過去の内視鏡検査・病理検査の結果 |
| 費用 | 保険適用の有無、生検やポリープ切除を行った場合の費用 |
抗凝固薬や抗血小板薬などを服用している場合は、自己判断で中止せず、処方医と検査担当医の指示に従ってください。糖尿病薬やインスリンも、食事制限に合わせた調整が必要になる場合があります。
受診先は、便潜血検査の異常や血便、便通の変化があるときは消化器内科が主な相談先です。迷う場合はかかりつけの内科で相談し、大腸内視鏡検査に対応する医療機関を紹介してもらう方法もあります。大量の血便や強い腹痛がある場合は、「すぐに受診を考えたい症状」で説明したとおり、救急医療機関を検討します。
よくある質問
症状がなくても大腸内視鏡検査を受けた方がいいですか?
症状がなく、家族歴やポリープの既往など個別に検査時期を相談する事情がなければ、まず大腸がん検診を受けることが基本です。検診で要精密検査となったときや、家族歴・ポリープの既往があるときは、大腸内視鏡検査が検討されます。
便潜血検査が1回だけ陽性でも精密検査は必要ですか?
必要です。1回だけの陽性でも要精密検査の対象で、再検査で陰性になっても精密検査の代わりにはなりません。
血便があるときは大腸内視鏡検査が必要ですか?
出血の量、続いている期間、腹痛の有無などから、医師が必要な検査を判断します。繰り返す血便は痔と決めつけず、消化器内科へ相談してください。
大腸内視鏡検査は何年おきに受けますか?
一律の年数はなく、前回の検査結果やポリープの有無、家族歴によって医師が判断します。検査を受けたときに示された次回の時期を確認しておきましょう。
大腸内視鏡検査は受けない方がいいですか?
症状や検診の結果がなければ、すぐに受ける必要はない場合があります。一方、血便や要精密検査の結果があるのに自己判断で見送ると、原因を確認する機会を逃すことがあります。
まとめ
大腸内視鏡検査を受けた方がいい人は、便潜血検査で要精密検査となった人と、血便や長引く便通の変化などがある人です。症状のない40歳以上の人は、まず1年に1回の便潜血検査を受け、家族歴やポリープの既往がある人は、検診とは別に検査の時期を医師へ相談しましょう。次に何をするか迷うときは、健診結果と気になる症状を持って消化器内科へ相談してください。
参考資料
- 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査は、どんな時に行う検査でしょうか?」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 予防・検診」
- 日本消化器内視鏡学会「便潜血検査で『1回だけ陽性』と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?」
- 日本消化器内視鏡学会「内視鏡検査で鎮静薬を使用することのよい点と悪い点は何ですか?」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 検査」
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近いうちに相談したい症状
- 血便を繰り返している、便に血が付いている
- 便秘、下痢、排便回数の変化が続いている
- 便が細くなった、便が残る感じが続いている
- 腹痛や腹部の張りが長引いている
- 貧血の症状(めまいなど)が続いている
- 便潜血検査で要精密検査となった
血便は痔で起こる場合もありますが、症状だけで出血の原因を特定することはできません。便秘や下痢も食事や服用薬などで起こることがありますが、これまでと違う状態が続くときは医療機関へ相談してください。国立がん研究センターも、症状に気付いたら早めに消化器科・胃腸科・肛門科などの身近な医療機関を受診するよう案内しています。
加地先生からのコメント
血便や便通の変化は、「いつもと違う状態が続いている」ことが、受診を考える手がかりになります。
診察では、いつ頃からか、どのくらいの頻度か、血は便の表面に付いているのか混じっているのか、腹痛やめまいなどがないかをお聞きします。
気づいた時期や回数を、簡単なメモに残しておくと、お話しいただきやすくなります。
「痔だから」「年齢のせいだから」と一人で結論を出さず、気になる変化があれば、早めにご相談ください。
症状がない場合は大腸がん検診(便潜血検査)を受ける
症状がない人に対する大腸がん検診は、がんによる死亡を減らす目的で行われます。国立がん研究センターは、40歳から1年に1回の便潜血検査を勧めています。大腸がんは早期にはほとんど自覚症状がないため、症状がない時期に検診を受け、早く見つけて治療することが、大腸がんで亡くなることを防ぐことにつながります。
国立がん研究センターは、喫煙、飲酒、肥満、炎症性腸疾患があると大腸がんが発生する危険性が高まると説明しています。こうした要因がある人は、検診を欠かさず受け、症状が出たときは早めに相談しましょう。ただし、生活習慣だけで大腸内視鏡検査が必要になるわけではなく、必要性は医師が判断します。
便潜血検査は、便に含まれる微量の血液を調べる検査です。大腸の内部を直接観察する検査ではないため、結果だけで出血の場所や原因は分かりません。検診には、がんがあっても陰性になる(偽陰性)、異常がないのに陽性になる(偽陽性)といった不利益があります。検診を受けたあとも、症状が出たときは結果にかかわらず相談してください。なお、要精密検査となったときに行う大腸内視鏡検査では、まれに出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの偶発症が起こることがあります。
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸・直腸の粘膜をカメラ映像で観察する検査です。ポリープ、炎症、出血、腫瘍を疑う変化などを確認し、必要に応じて組織を採取する生検や、ポリープの切除を行う場合があります。
| 項目 | 大腸がん検診(便潜血検査) | 大腸内視鏡検査 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 症状のない40歳以上の方 | 検診で要精密検査となった方、症状や既往歴から必要と判断された方 |
| 方法 | 便に含まれる血液を調べる | 大腸・直腸の粘膜をカメラ映像で観察する |
| 分かること | 便に血液が混じっているか | ポリープ、炎症、出血、腫瘍を疑う粘膜変化など |
| 次の対応 | 要精密検査なら医療機関を受診する | 必要に応じて生検、ポリープ切除、追加検査を行う |
便潜血検査で要精密検査となった場合
消化器内科などを受診し、精密検査を受けてください。便潜血検査は通常2日分の便を調べますが、1回だけ陽性でも要精密検査の対象です。日本消化器内視鏡学会は、1回だけ陽性の場合も精密検査として大腸内視鏡検査を受けることを勧めています。
陽性のあとに検査をやり直して陰性になっても、精密検査を受けなくてよいという判断にはなりません。再検査は精密検査の代わりにならないためです。精密検査の方法には、全大腸内視鏡検査のほか、大腸内視鏡検査と大腸X線検査の併用、大腸CT検査があり、どの方法にするかは医師が判断します。
便潜血検査で陽性になる原因には、ポリープ、炎症、痔などがあります。ただし出血の原因を症状だけで判断することはできないため、「痔がある」「自覚症状がない」という理由で放置しないでください。受診するときは健診結果を持参すると、検査日、判定、過去の結果を医師へ伝えやすくなります。
家族歴・過去のポリープ・持病がある場合
大腸がんの家族歴、過去の大腸ポリープ、炎症性腸疾患などは、大腸内視鏡検査の必要性や時期を判断する材料になります。該当する人全員が同じ年齢や間隔で検査を受けるわけではありません。
大腸がんの家族歴がある場合
受診時には、分かる範囲で次の情報を医師へ伝えてください。
- 誰が大腸がんと診断されたか
- 診断されたときの年齢
- 同じ病気になった血縁者が複数いるか
- 本人が過去に大腸ポリープを指摘されたことがあるか
家族歴があるという理由だけで、検査の開始年齢や間隔を一律に決めることはできません。若い年齢で診断された血縁者がいる場合や、血縁者が複数いる場合は、その内容を詳しく伝えましょう。
過去に大腸ポリープを切除した場合
次回の検査時期は、切除したポリープの数、大きさ、病理検査の結果、前回の観察範囲などをもとに判断されます。「毎年」「何年間も不要」などと一律には決められないため、検査後に示された次回時期を確認し、内視鏡検査の報告書や病理検査の結果を保管してください。
炎症性腸疾患などの持病がある場合
潰瘍性大腸炎やクローン病などがある場合は、病気の範囲や治療の状況に応じて、定期的な内視鏡検査が計画されることがあります。一般的な大腸がん検診ではなく、主治医が示す検査計画に従ってください。
検査を受けるか迷ったときの考え方
大腸内視鏡検査は、症状や検診の結果があるときに、大腸の中を直接見て原因を調べられる検査です。一方で、下剤による前処置や検査中の負担があり、まれに出血や穿孔などの偶発症も起こります。受けるかどうかは、得られる情報と負担の両方を医師と確認して決めます。
- 症状がある、または検診で要精密検査となったときは、痔や年齢のせいと決めつけず、まず医師に相談してください。
- 症状がなく、検診でも異常がなければ、次の検診を受けることが基本です。すぐに内視鏡検査が必要とは限りません。
- 高齢の方や、持病・服用中の薬がある方は、前処置や検査の負担、鎮静薬の使い方が変わることがあります。主治医と相談して決めましょう。
- つらさや不安が大きいときは、鎮静薬を使えるかどうか、事前に医療機関へ確認してください。
通常の大腸内視鏡検査が難しい場合には、カプセル内視鏡が行われることがあります。ただし適応は限られ、どの検査が適しているかは症状や状態によって異なります。希望する場合も、自己判断せず医師へ相談してください。
鎮静薬を使った場合、当日は自動車・バイク・自転車を運転できません。帰宅方法も事前に確認しましょう。
加地先生からのコメント
大腸内視鏡検査は、下剤による前処置や検査中の負担が気になり、ためらう方もおられます。
そのようなときは、何がいちばん不安なのか(下剤、痛み、恥ずかしさ、時間など)を、受診の際にそのままお話しください。
鎮静薬の使い方や前処置の方法など、負担を和らげる工夫を一緒に考えることができます。
検査が必要かどうかは、症状や検診の結果、ご家族の病歴によって、お一人おひとりで異なります。
迷うことそのものを、ご相談のきっかけにしていただければと思います。
検査前に確認したいこと・受診先
検査前の準備、鎮静薬の使用、ポリープ切除への対応は、医療機関や本人の状態によって異なります。予約時や事前診察で、次の点を確認してください。
| 確認したい項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 前処置 | 食事制限の内容、下剤を飲む時間・場所 |
| 鎮静薬 | 使用できるか、付き添いの要否、検査後の休憩と帰宅方法 |
| ポリープ切除 | 当日に切除できるか、後日の治療になる場合があるか |
| 服用薬 | 抗凝固薬、抗血小板薬、糖尿病薬、インスリンの扱い |
| 持参するもの | お薬手帳、健診結果、過去の内視鏡検査・病理検査の結果 |
| 費用 | 保険適用の有無、生検やポリープ切除を行った場合の費用 |
抗凝固薬や抗血小板薬などを服用している場合は、自己判断で中止せず、処方医と検査担当医の指示に従ってください。糖尿病薬やインスリンも、食事制限に合わせた調整が必要になる場合があります。
受診先は、便潜血検査の異常や血便、便通の変化があるときは消化器内科が主な相談先です。迷う場合はかかりつけの内科で相談し、大腸内視鏡検査に対応する医療機関を紹介してもらう方法もあります。大量の血便や強い腹痛がある場合は、「すぐに受診を考えたい症状」で説明したとおり、救急医療機関を検討します。
よくある質問
まとめ
大腸内視鏡検査を受けた方がいい人は、便潜血検査で要精密検査となった人と、血便や長引く便通の変化などがある人です。症状のない40歳以上の人は、まず1年に1回の便潜血検査を受け、家族歴やポリープの既往がある人は、検診とは別に検査の時期を医師へ相談しましょう。次に何をするか迷うときは、健診結果と気になる症状を持って消化器内科へ相談してください。
参考資料
- 日本消化器内視鏡学会「大腸内視鏡検査は、どんな時に行う検査でしょうか?」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 予防・検診」
- 日本消化器内視鏡学会「便潜血検査で『1回だけ陽性』と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?」
- 日本消化器内視鏡学会「内視鏡検査で鎮静薬を使用することのよい点と悪い点は何ですか?」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん) 検査」
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。
この記事の監修者

加地 到(かじ いたる) 先生
大阪大学医学部を卒業後、大阪国際がんセンター(旧・大阪府立成人病センター)や市立豊中病院などで消化器内科の診療に携わり、加地内科クリニックを開業。
現在は院長として、胃カメラ・大腸内視鏡検査を中心に消化器内科の診療にあたる。
医学博士(大阪大学)、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医。


